連絡が取れなくなった家族、昔世話になった恩師、姿を消した債務者。
探している相手は人それぞれですが、探偵に頼めば何でも調べられると思われていることが多い分野でもあります。
実際には、探偵ができることは探偵業法で定義されていて、そこには入らない調べ方がいくつもあります。
この記事では、探偵の人探しが法律上どこまでの行為を指すのかを条文で確認したうえで、依頼する前に手元で整理しておくこと、費用が変わる要因、引き受けてもらえない依頼の種類を順に見ていきます。
探偵の人探しは「実地の調査」を指す
まず、探偵業務そのものの定義を押さえておくと、できることの範囲がはっきりします。
探偵業法が定めている探偵業務の中身
探偵業法第2条1項は、探偵業務を次のように定義しています。
他人の依頼を受けて、特定人の所在又は行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その調査の結果を当該依頼者に報告する業務をいう。
「特定人の所在」についての情報収集が明記されているので、人探しは探偵業務の本来の対象です。
同時に、その方法は聞込み・尾行・張込みと、それらに類する実地の調査に限られていることも読み取れます。
足を使って現地で確かめる仕事だということです。
戸籍や住民票を探偵に取ってもらうことはできない
生き別れた家族を探す場面でよく誤解されるのが、戸籍の扱いです。
戸籍法第10条の2は、本人や配偶者、直系親族以外の第三者が戸籍謄本等を請求できる場合を限定しています。
そのうえで同条3項は、受任している事件の業務のために請求できる資格者を列挙しています。
- 弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士
- 社会保険労務士、弁理士、海事代理士、行政書士
この列挙に探偵は入っていません。
つまり、探偵が依頼者の代わりに戸籍や除籍を取り寄せることは制度として想定されていません。
戸籍をたどる必要がある調査は、弁護士など請求できる資格者に依頼する話になります。
探偵の側から弁護士を紹介してもらえることはありますが、それは探偵が戸籍を扱えるという意味ではありません。
「独自のデータベース」という言葉の受け止め方
人探しの説明でよく出てくる「独自のデータベース」も、中身を確かめておきたい言葉です。
探偵業務の定義は実地の調査なので、名簿を検索して住所が出てくるような仕組みは、そもそも探偵業務として想定されていません。
実際に指しているのは、過去の調査で蓄えた地域の土地勘や、同業者とのつながりであることが多い部分です。
相談の場で「そのデータベースには何が入っていて、どう調べるのか」を聞いて、答えが曖昧なら、そこは判断材料になります。
依頼の前に、手元で整理しておく2つのこと
相談に行く前に整理しておくと、見積もりも調査方針も具体的になります。
探している相手との関係
家族なのか、友人・知人なのか、金銭のやり取りがある相手なのかで、調査の進め方も、後で取れる手段も変わります。
家族や親族であれば戸籍をたどる道があり、債務者であれば弁護士に引き継いで法的手続きに進む道があります。
事件性がなく、ただ連絡先を知りたいだけの相手であれば、聞込みが中心の調査になります。
手元にある手がかり
見積もりは、手がかりの量と鮮度でほぼ決まります。
| 種類 | 具体的に集めておくもの |
|---|---|
| 基礎情報 | 氏名(旧姓・旧名も)、生年月日、過去の住所、勤務先や通っていた学校 |
| 写真 | 直近のものと、特徴が分かる古いものの両方 |
| 連絡の痕跡 | 古い携帯番号、メールアドレス、SNSのアカウント名、最後にやり取りした日 |
| 紙に残っているもの | 手紙やはがき、年賀状、名簿、卒業アルバム |
| 背景 | 連絡が途絶えた経緯、金銭トラブルの有無、本人が意図して離れた可能性 |
最後の「背景」を隠さずに伝えるかどうかで、調査の方針がまったく変わります。
相手が意図して身を隠しているのか、単に引っ越しただけなのかで、必要な日数も人数も違ってくるためです。
依頼の種類ごとに、進み方が変わる
同じ人探しでも、相手が誰かによって調査の組み立ても、その後に取れる手段も違います。
| 種類 | 主な対象 | 進め方の特徴 | 見つかった後 |
|---|---|---|---|
| 家出・失踪 | 家族、未成年、認知症の高齢者 | 事件や事故の可能性があるため、警察への連絡が先。探偵は行動圏の聞込みを並行して行う | 保護と、再発を防ぐための話し合い |
| 所在調査 | 恩師、旧友、昔の知人 | 事件性がないため警察は動かない。古い住所や勤務先を起点にした聞込みが中心 | 手紙などで意思を伝え、相手に選んでもらう |
| 債務者・トラブル相手 | 返済が止まった相手、係争の相手方 | 相手が警戒しているため日数がかかりやすい。張込みの比重が上がる | 弁護士に引き継ぎ、支払督促や訴訟へ |
| 生き別れの家族・親族 | 実の親、兄弟姉妹 | 戸籍をたどる部分は弁護士等の資格者の担当。探偵は判明した住所から先の確認を受け持つ | 相手の意思を確かめたうえでの連絡 |
表の右端を見ると分かるとおり、探偵の担当範囲が終わる場所は種類ごとに違います。
依頼する前に、自分がどの行に当てはまるのかを決めておくと、相談が早く進みます。
命に関わる可能性があるときは、先に警察へ
家族が突然いなくなった、認知症の高齢者が戻らない、未成年が家を出たまま連絡が取れない。
こうした場面は、探偵を探すより先に警察に連絡してください。
事件や事故に巻き込まれている可能性があるときは、警察の届出と発見活動が優先されます。
緊急のときは110番、緊急ではないが相談したいときは警察相談専用電話の#9110につながります。
探偵に依頼する場合も、警察への届出と並行して進めるものであって、どちらかを選ぶ関係ではありません。
一方で、事件性がなく、相手が自分の意思で連絡を絶っているだけというケースでは、警察が居場所を突き止めて教えてくれることは期待できません。
そこが探偵への依頼が現実的になる場面です。
引き受けてもらえない人探しがある
人探しは、依頼の目的次第で、そもそも受けられない種類のものがあります。
違法な目的だと業務自体が成り立たない
探偵業法第7条は、契約を結ぶとき、探偵業者は依頼者から「調査結果を犯罪行為、違法な差別的取扱いその他の違法な行為のために用いない旨を示す書面」の交付を受けなければならないと定めています。
さらに第9条1項は、調査結果がそうした違法な行為に用いられると知ったときは、その業務を行ってはならないとしています。
- 別れた相手につきまとう目的で居場所を知りたい
- 相手に危害を加えるつもりがある
- 就職や結婚に関して差別的な取扱いをする目的で身元を調べたい
こうした目的の依頼は、書面の段階で成立しません。
正面から断る事務所が、法律どおりに動いている事務所です。
探偵だからといって違法な手段が使えるわけではない
第6条は、探偵業務であっても他の法令で禁止・制限されている行為ができるようになるわけではない、と明記しています。
相手の家の敷地に入る、車に無断でGPSを付ける、アカウントに無断でログインするといった手段は、探偵が行っても依頼者が行っても同じ扱いです。

費用が変わる要因

人探しの料金は、調査にかかる日数と動く人数で決まります。
- 手がかりの鮮度と量:直近の住所や勤務先が分かっていれば短く済み、20年前の情報しかなければ日数がかかる
- 相手が隠れているかどうか:意図的に身を隠している相手は、張込みの期間が長くなる
- 調査範囲:転居先の見当がついているのか、全国のどこにいるか分からないのかで大きく変わる
- 体制:広範囲の聞込みや移動を伴う追跡は人数が要るため、その分が人件費に乗る
見積もりを受け取ったら、何日分・何名分が含まれているのか、延長したときの単価はいくらかを書面で確認してください。
探偵業法第8条1項7号により、契約前に「金銭の概算額と支払時期」を書面で説明することが義務づけられています。
成功報酬制を提示された場合は、何をもって成功とするのかを契約書に書いてもらってください。
人探しでの「成功」は、原則として現住所の特定までを指します。

見つかった後にできること、できないこと

居場所が分かったところで、調査としては終わりです。
その先をどうするかは、依頼者が決めることになります。
相手には会わない自由がある
連絡を絶っている相手には、そのままでいたいという意思があることも多いものです。
探偵が代わりに説得したり、相手の生活に踏み込んだりすることはできません。
いきなり訪ねるのではなく、手紙などで意思を伝えて相手に選んでもらう形にすると、関係をこじらせずに済みます。
金銭の問題なら弁護士へ引き継ぐ
債務やトラブルの相手を探していた場合は、住所が分かった時点で弁護士に引き継ぐのが通常の流れです。
支払督促や訴訟の手続きには送達先の住所が必要になるため、そこまでが探偵の担当範囲になります。
依頼先を選ぶときに見るところ

- 契約前に第8条1項の書面が出てくるか。届出をした公安委員会の名称が書かれているか
- 人探しの進め方を、聞込み・張込みといった具体的な作業として説明できるか
- 戸籍が必要な調査のとき、弁護士に引き継ぐ話が出てくるか
- 差別的な目的や、つきまとい目的の依頼をはっきり断る姿勢があるか
- 「成功」の定義と、延長したときの単価が書面にあるか
事務所の見極め方は、こちらでも詳しく扱っています。

まとめ
- 探偵業務は聞込み・尾行・張込みなど「実地の調査」を指す(第2条1項)。名簿検索で住所が出る仕組みではない
- 戸籍謄本等を第三者として請求できるのは弁護士など8つの資格者で、探偵は列挙に入っていない(戸籍法第10条の2)
- 命に関わる可能性があるときは警察が先。緊急は110番、相談は#9110
- 違法な目的の依頼は第7条の書面と第9条1項により成立しない
- 費用は日数と人数で決まる。概算額は第8条1項7号で契約前に書面説明される
手がかりを整理して持っていくほど、見積もりも調査方針も具体的になります。
探している理由と、手元にあるものを正直に伝えるところから始めてください。
人探しに関するFAQ
人探し調査の成功率はどのくらいですか?必ず見つかりますか?
見つかりやすいケース: 氏名や生年月日、直近の住所、写真がそろっている場合や、いなくなってから日が浅い場合です。
難しくなるケース: 情報が古い場合や、対象者が意図的に身を隠している場合は、時間も費用もかかります。
成功率を数字で言い切る事務所には注意してください。条件によって大きく変わるものを一律の数字で示すのは無理があります。相談のときは「手元にあるこの情報でどこまで見込めるか」を具体的に説明してもらいましょう。
警察に「家出人捜索願」を出している場合でも、探偵に依頼する意味はありますか?
事件や事故に巻き込まれている可能性があるとき、認知症の高齢者や未成年が戻らないときは、警察への連絡が先です。緊急なら110番、緊急でなければ警察相談専用電話の#9110につながります。
一方で、相手が自分の意思で連絡を絶っているだけというケースでは、警察が居場所を突き止めて依頼者に教えてくれることは期待できません。そこが探偵への依頼が現実的になる場面です。
探偵ができるのは、探偵業法第2条1項が定める聞込み・尾行・張込みといった実地の調査です。
人探しの費用は「成功報酬」ですか?特定できなかった場合、費用は戻りますか?
成功報酬制: 居場所の特定に成功した場合のみ費用が発生しますが、着手金が必要な場合が多く、費用全体が高くなる傾向があります。
時間制(費用発生): 調査時間に応じて費用が発生するため、特定できなかった場合でも使った時間分の費用は支払う必要があります。
契約確認: 契約時には、「成功の定義」を「現住所の特定」など具体的に確認し、特定できなかった場合の返金規定についても明確にしておくことが重要です。
連絡を絶っている「生き別れの親族」を探すのは違法になりませんか?
戸籍について:戸籍法第10条の2は、本人や配偶者、直系親族以外が戸籍謄本等を請求できる場合を限定しています。受任事件のために請求できる資格者として挙げられているのは弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、行政書士で、探偵はこの列挙に入っていません。戸籍をたどる部分は、請求できる資格者に依頼する話になります。
接触について:相手には連絡を拒む自由があります。いきなり訪ねるのではなく、手紙などで意思を伝えて相手に選んでもらう形にしてください。
目的について:つきまといや差別的な取扱いを目的とする依頼は、探偵業法第7条の書面と第9条1項により成立しません。
調査を成功させるために、依頼者側でやってはいけない行動は何ですか?
対象者への接触:見つかりそうだと焦り、自分で連絡を取ったり、居場所に行ったりすると、警戒されて身を隠すことになり、調査が失敗します。
情報源への接触:昔の友人や職場に「探偵が入る前の段階で、自分で連絡を取って探した」ことを知られると、その後のプロの聞き込みが難しくなります。
情報の開示:探偵には、借金やトラブルといったネガティブな情報も含め、すべて正直に伝えてください。情報が多いほど、調査の成功率は高まります。

