浮気調査を考えたとき、まず「大手に頼めば間違いないのでは」と思う方は多いと思います。
ただ、探偵業界の「大手」には法律上の定義がなく、どの事務所が名乗っても問題にならない呼び方です。
この記事では、警察庁が毎年公表している探偵業の統計と探偵業法の条文をもとに、「大手」という言葉が実際に何を指しているのかを整理します。
そのうえで、大手に頼む利点と、規模が大きいからこそ起きる不都合、そして規模に関係なく契約前に確認できることを順に見ていきます。
「大手」に法律上の定義はない
探偵業法には、事務所の規模に関する区分も、大手という呼称の基準もありません。
法律が求めているのは届出だけなので、拠点がひとつでも全国にあっても、手続きの種類は変わらないということです。
届出は「営業所ごと」に必要
探偵業法第4条1項は、探偵業を営もうとする者は営業所ごとに、その所在地を管轄する都道府県公安委員会に届出書を提出しなければならないと定めています。
会社単位ではなく営業所単位なので、全国に拠点を持つ事務所は、その拠点の数だけ各地の公安委員会に届け出ていることになります。
つまり「全国対応」と書かれていても、その地域に届出のある営業所があるのか、電話だけ受けて他所から調査員を出しているのかで中身が違うということです。
契約前の説明では、第8条1項2号により「届出をした公安委員会の名称」を伝えることが義務づけられています。
自分が依頼する地域の公安委員会名が出てくるかどうかは、その場で確認できます。
実際に公安委員会名を都道府県別に並べている事務所もある
たとえばさくら幸子探偵事務所の公式サイトには、「届出書を提出した公安委員会」として北海道公安委員会、北海道函館方面公安委員会、宮城県公安委員会……というように、届出先が都道府県ごとに列挙されています(2026年9月時点で確認)。
拠点を構えている地域が、そのまま届出先の一覧として並ぶかたちです。
一方で、トップページや会社概要のページには届出情報を載せていない事務所もあります。
見当たらない場合は、契約前の書面で確認すれば済む話なので、それ自体を落ち度と決めつける必要はありません。
令和7年末の届出数は7,354件
警察庁生活安全局が公表した「令和7年中における探偵業の概況」によると、令和7年末の届出数(営業所数)は7,354件で、前年より256件増えています。
| 区分 | 令和5年 | 令和6年 | 令和7年 |
|---|---|---|---|
| 届出数(営業所数) | 7,027 | 7,098 | 7,354 |
| うち個人 | 5,113 | 5,142 | 5,293 |
| うち主たる営業所数 | 4,979 | 5,020 | 5,161 |
出典:警察庁生活安全局生活安全企画課「令和7年中における探偵業の概況」
この数字の読み方で大事なのは、7,354件が営業所の数であって、事業者の数ではないという点です。
主たる営業所が5,161件ということは、従たる営業所(支店)がおよそ2,200件あることになります。
支店を何十と持つ事務所はその中のごく一部なので、業界全体では個人や小規模の事務所が大半を占めている構図です。
大手に依頼したときに得られるもの

規模が大きいこと自体が品質を保証するわけではありませんが、組織として持てるものには確かに違いがあります。
複数名体制を組みやすい
尾行は、対象者が電車を乗り換えたり、車で急に進路を変えたりした時点で切れます。
調査員が複数いれば交代しながら追えるため、見失う場面が減るという理屈です。
人数を確保できるかは在籍している調査員の数に左右されるので、人員を抱えている事務所ほど組みやすくなります。
ただし「3名以上が標準」と決まっているわけではなく、料金にも直結する部分なので、見積もりの前提に何名分が入っているかを確認してください。
拠点をまたぐ調査を引き継げる
対象者が出張や転居で別の都道府県へ移動した場合、その地域に営業所があれば調査を続けやすくなります。
拠点がひとつの事務所でも遠方対応をしているところはありますが、交通費や宿泊費が別途かかる形になりやすい部分です。
弁護士との連携窓口がある
証拠が取れた後は、慰謝料請求や離婚の手続きに移ります。
相談先を紹介してもらえる体制があると、そこで立ち止まらずに済みます。
規模が大きいことによる不都合と、その避け方

組織が大きいことは、そのまま料金や対応の画一化として跳ね返ってくる面もあります。
固定費が料金に乗る

広告費、全国の拠点の維持費、相談窓口の人件費といった固定費は、最終的に調査料金に反映されます。
規模の大きさは体制の厚さにつながる一方で、費用の面では不利に働きやすいということです。
見積もりを比べるときは、前提条件をそろえないと高い安いの判断ができません。
- 調査時間と調査員の人数を同じ条件にして出してもらう
- 人件費・車両費・機材費が提示額に含まれているかを確認する
- 報告書作成費、交通費、深夜割増、キャンセル料の条件を書面で見る
- 税別か税込かをそろえて最終総額で比べる
内訳の質問に具体的に答えられるかどうかは、それ自体が判断材料になります。
料金の相場感については、こちらで詳しく扱っています。

担当者が変わる、対応が画一化する
依頼者の数が多い分、相談を受ける人と実際に調査を指揮する人が別ということが起こります。
契約前に、今回の調査責任者の氏名と、何名でどう動くのかを確認しておくと、後から話が食い違いにくくなります。
「成功報酬」の成功が何を指すのか
成功報酬制は費用を抑えられそうに見えますが、「成功」の定義が契約書に書かれていないと、望んだ結果が得られなくても報酬が発生します。
浮気の事実がある程度確認できた時点を成功とするのか、裁判で不貞行為の認定に使える写真が取れた時点を成功とするのかで、意味がまったく変わります。
契約書に成功の条件を具体的に書いてもらうよう頼んでください。
第8条2項により、契約後には調査の内容・期間・方法を明らかにする書面が交付されるので、その記載とも照らし合わせられます。
「大手だから安全」とは限らない
規模と法令遵守は別の話です。
警察庁の統計には、探偵業者に対する監督の実績が毎年載っています。
令和7年の行政処分は指示19件
令和7年中の行政処分は、営業廃止命令が0件、営業停止命令が0件、指示が19件でした(前年比15件減)。
内訳を見ると、何が問題になっているのかが分かります。
| 指示の理由(令和7年) | 件数 |
|---|---|
| 変更届出書等虚偽 | 4 |
| 書面交付違反 | 4 |
| 実施原則違反 | 2 |
| 書面受理違反 | 2 |
| 教育義務違反 | 2 |
| 名簿不整備・虚偽記載等 | 2 |
| 業に関し他法令違反 | 2 |
| 標識掲示違反 | 1 |
出典:警察庁生活安全局生活安全企画課「令和7年中における探偵業の概況」
最も多い理由のひとつが「書面交付違反」、つまり第8条が求める書面を依頼者に渡していないというものです。
契約前に書面が出てこない事務所は、規模に関係なく、この時点で法律の求める手続きを満たしていません。
探偵業者自身が検挙された事例もある
同じ統計には、令和7年中に探偵業者または探偵業従事者が探偵業務に関して他の法令に違反して検挙された主な事例として、軽犯罪法違反、ストーカー規制法違反、建造物侵入等が挙げられています。
探偵業法第6条も、探偵業務だからといって他の法令で禁止されている行為ができるようになるわけではない、と明記しています。
依頼した相手が探偵だというだけで違法性が消えることはない、ということです。
対象者の車に無断でGPSを付けるよう勧めてくる事務所は、この線引きを持っていません。

規模に関係なく、契約前に確認できること
大手かどうかを気にするより、次の点が満たされているかを見るほうが確実です。
書面が出てくるか
第8条1項は、契約前に書面を交付して説明すべき事項を9つ挙げています。
商号と住所、届出をした公安委員会の名称、法令遵守、秘密の保持、提供できる業務の内容、委託に関する事項、金銭の概算額と支払時期、契約の解除に関する事項、資料の処分に関する事項です。
このうち「金銭の概算額」と「契約の解除に関する事項」の2つは、後のトラブルに直結しやすいので、その場で読んで納得できるまで聞いてください。
クーリングオフについての誤解
「探偵業法でクーリングオフができる」という説明を見かけることがありますが、同法にその定めはありません。クーリングオフは特定商取引法の制度で、訪問販売や電話勧誘販売に当たる契約であれば、書面を受け取った日から8日間は無条件で解除できます。
自分から事務所に出向いて契約した場合は、これらの類型に当たらないため対象外となるのが原則です。その場合に頼れるのは、第8条1項8号で説明される契約書の解除条項のほうです。解約時にいくら請求されるのかを、契約前に必ず確認してください。
契約や解約でもめたときは、消費者ホットライン188で最寄りの消費生活センターにつながります。
調査員が自社の従業者か
探偵業法第9条2項は、探偵業務を探偵業者以外の者に委託してはならないと定めています。
第12条1項では、営業所ごとに従業者名簿を備えることも義務づけられています。
誰が調査を担当するのかが説明できない状態は、この条文に照らして不自然です。
サガスヨで紹介している大手事務所
サイト内で個別に取り上げている事務所は次の3つです。
それぞれの記事で、対応している調査の種類や料金の考え方をまとめています。



まとめ
- 探偵業法に「大手」の定義はない。届出は営業所ごと(第4条1項)で、全国対応の中身は地域の営業所の有無で変わる
- 令和7年末の届出数は7,354件。うち主たる営業所が5,161件で、業界の大半は小規模
- 大手の利点は人員を確保しやすいことと拠点をまたげること。固定費が料金に乗る点は不利に働く
- 令和7年の行政処分は指示19件で、理由の最多層は「書面交付違反」。探偵業者自身がストーカー規制法違反等で検挙された事例もある
- クーリングオフは探偵業法ではなく特定商取引法の制度。事務所に出向いて契約した場合は原則対象外
規模で選ぶより、契約前に書面が出てくるか、その内容を説明できるかを見るほうが、結果として外れを引きにくくなります。
判断に迷ったら、消費者ホットライン188に相談できることも覚えておいてください。
大手探偵事務所に関するFAQ
大手だと、個人情報や相談内容が漏れるリスクは低いですか?
守秘義務は探偵業法第10条1項が定めるもので、事務所の大きさに関係なく課されています。同条2項は、調査で作成・取得した資料の不正な利用を防ぐ措置をとることも義務づけています。
警察庁「令和7年中における探偵業の概況」を見ると、この年の行政処分(指示19件)の内訳に守秘義務違反は挙がっていません。
確認したいのは規模ではなく、第8条1項の書面で秘密の保持と資料の処分に関する事項がどう説明されるかのほうです。
大手探偵事務所の料金はなぜ高額になる傾向があるのですか?
規模が大きいほど体制は厚くなりますが、その分が費用に乗ることになります。
比べるときは、調査時間と調査員の人数をそろえた見積もりを複数取り、税別か税込かを統一したうえで最終総額で判断してください。
契約した後に、担当の調査員が素人だったりしませんか?
何名体制が適切かは、対象者の行動範囲や移動手段によって変わるため、「最低3名」といった決まりがあるわけではありません。
契約前に、今回の調査責任者の氏名と、実際に何名でどう動くのかを確認してください。探偵業法第12条1項により、営業所ごとに従業者名簿を備えることが義務づけられています。
大手なら「失敗」は絶対にありませんか?
浮気調査は人間を対象とするため、偶発的な失敗はゼロではありません。
しかし、大手は調査失敗時の再調査の保証や返金規定が明確な場合が多く、リスク回避の体制が整っています。
大手探偵事務所の料金が高いのは、調査能力と関係がありますか?
探偵業法には成功率や結果に関する基準がなく、各社が掲げる「成功率」の数字にも共通の算出方法はありません。
料金で見るべきなのは、何時間・何名分が含まれているのか、報告書作成費や深夜割増が別途かかるのかという内訳のほうです。
成功報酬制の場合は、「成功」が何を指すのかを契約書に明記してもらってください。

